そして、何故そのことを思い出すのだろう。思い出に残る事実や行為と、そのときに感じた気持ちのどちらの方が影響するのだろう。
思い出というくらいだから気持ちの方が断然大きく心に刻まれるのではないか。そう漠然と思っていました。
しかし、この漠然とした考えは本当だろうか。
私は小学生のときのことを思い出すとき、真っ先に頭に浮かぶのは机に彫刻刀で穴を開けている風景です。
2年生でした。授業風景なんかは、まったくと言っていいほど記憶にありません。というより、先生のいうことを聞いていませんでしたし、関心を持ったことはありません。
そんなわけですから授業中、ずっと彫刻刀で机の上から穴を開け、そして横からも穴を開けていました。いつか貫通させようと、毎日毎日削り続けていました。
行為が記憶に刻み込まれるとき、当時は「こんなだったなー」と、後付で今の気持ちを昔の自分の気持ちとして当てはめていることに気付きます。
つまり、その時の思いが同じテンションで維持されることはなく、今の気持ちに左右される。今の自分の気持ちによって如何様にもなる、思い出とはそういうものなんでしょうね。